私たちは正しく情報を集められているのか?

今回は、私たちの日常生活に深く根ざしている「情報収集」という行為について、ちょっと深掘りしていこうと思います。
私たちは、毎日のようにスマートフォンやパソコンで何かを調べたり、YouTubeで動画を見たりしていますよね。現代で情報収集を行わない人のほうが珍しいでしょうし、「いかにうまく検索できるか」というスキルを重要視している人たちもいます。
が、今回はこの情報収集という行為に対して疑問を投げかける話です。私たちは本当に、正しい情報を集めることができているのでしょうか?
「できていない」と答える人のほうが多い、かもしれません。こんな辺境の地にまで来る勉強熱心な方々は、謙虚にそう答える人が多いんじゃないか、と思っているんですが、皆さんの考えはどうでしょうか?

ねぇ聞いて! たこ焼きを一日100個食べると幸せになれるんだって!

……。それ、どこ情報?

私が今考えました! 神の啓示ってやつだよ!

神に謝って、お姉ちゃん
情報収集はとても難しい

情報収集で間違った情報を手に入れる危険に関しては、語っても語りつくせないほど多くあります。
例えば、友達から「この料理店、めちゃくちゃ美味しいよ!」と聞いて行ってみたら、実際はそうでもなかった…といった程度なら、まあとくには問題ないでしょう。
が、例えば「ファーストフードの健康被害なんて大したことない」といった情報を信じて毎日ビッグマックを125個ほど食べたとしたら……たぶんその人は遠からずお星さまの仲間入りをすることでしょう。
いわゆる「情弱」を狙ったビジネスの被害者になったり、知らず知らず友人関係、恋人関係を悪化させることをしていったり、「クソ情報」がもたらす被害はまあ死ぬほど多いです。
現代は情報が増えすぎた結果、「情報識別能力」が大事だよ、みたいな話なんかもよく聞くようになりました。とはいえ、それをどうやって鍛えろというのか……。
そもそも、私たち人間は、正確に情報を選別する能力を持っていないわけです。悲しいことに。このブログに来るような方でしたら、それこそ「確証バイアス」なんかは聞いたことがあるかもしれません。
確証バイアスとは、自分の信じている情報があった場合、それを反証するような情報を自然と無視する性質のことです。
例えば、「宇宙人はいる」と信じている人がいたとしましょう。
その人は「宇宙人を撮影した!」「宇宙人のいる確率はこんなに高い!」みたいな情報だけを信じ、逆に「宇宙人の写真はフェイクである」とか「宇宙人はいないと考えるほうが自然」といった情報を無視する傾向にあります。
これはおおよそ全人類に見られる性質であり、ゆえに私たちは「自分が間違っているかもしれない」情報を調べるのがめちゃくちゃ苦手なんですね。
確証バイアスは結構有名な話なので知っている人も多いと思います。が、今回は別のバイアスの話です。私たちが知らずに陥ってしまっている「フォーマットの罠」というものについて解説していこうかなと思います。

ん~、わかるかも。私も「カロリー制限しろ」みたいな情報は見なかったことにするし

逆に私は「野菜食え」みたいな情報ばっかり見ちゃうな

確証バイアスに人間あらがえないってことだね……
フォーマットの罠とは?

フォーマットの罠とは何か?
それは、私たちが情報を受け入れるかどうかを決める際、情報の質よりも、情報が提示される「フォーマット」によって判断してしまう傾向のことです。
簡単に言えば、私たちは「慣れ親しんだ言葉遣い」や「よく知っている話し方」で提示される情報を、無意識のうちに「正しい」と判断してししまう傾向があるんです。
逆に、私たちにとって馴染みのないフォーマットで語られる情報は、その内容の正確さを精査することなく、「間違っている」と決めつけてしまい、受け入れない傾向があります。
これだけだとわかりづらいので、具体的な例を挙げてみましょう。例えば、以下のような情報があったとします:
これら4つの情報、本質的には同じことを言ってますよね?
どの情報も、「2リットルの水を飲もう」というメッセージです。でも、どうでしたか? これらの情報から受け取る印象は大きく異なるんじゃないでしょうか?
それこそ、「ガイアのパワー」のような表現を含む情報に対しては、多くの人が「何を言っているんだ」と違和感を覚え、拒絶反応を示すことでしょう。いやほんとガイアのパワーって何なんでしょうね?
私自身も、時々自分の視点を広げるために、スピリチュアル系の本を読むことがあります。「死後の世界が存在する7つの理由」とか読みます。読むんですが、正直なところ、かなり苦痛です。情報の正確さを判断する前に、まず「耐えられない」という感覚が襲ってくるんです。皆さんにも心当たりがありませんか?
このように、私たちは内容を判断する前に、「それが書かれているフォーマット」で判断を下す性質があるということです。それこそ自己啓発の文体とかに生理的嫌悪感を抱く人なんかもいることでしょう。

占い師の人が「神託によると1日2kgの野菜を食べるといい」って言ってたよ

……。まぁ、野菜はたくさん食べたほうがいいよね

バカな! 人間はフォーマットの罠に引っかかるって聞いたのに!

さすがに浅はかすぎてお見通しだよ、お姉ちゃん
なぜ、私たちはフォーマットで判断してしまうのか?

なぜ私たちはこのような判断をしてしまうのでしょうか? あくまで仮説にすぎませんが、実は、これには進化的な理由があるといわれています。私たちの祖先にとって、このような判断基準は生存に有利でした。
想像してみてください。私たちが狩猟採集時代に生きているとします。その中で、「なじみのあるフォーマット」で話してくるのはどんな人たちでしょうか? それはもちろん、自分のコミュニティ内の人間ですよね。いわゆる内輪ネタなんかがわかりやすいでしょう。
逆に「なじみのないフォーマット」で話してくるのはどんな存在か? 自分と親しくない、もしくはコミュニティ外の人間である可能性が高いでしょう。
自分のコミュニティの内部の人間と、コミュニティの外部の人間、どちらが自分にとって有益な情報を提供してくれるでしょうか?
答えは明らか。コミュニティ内部の人間です。
なぜなら、ほぼ一度しか会わない外部の人間は、私たちを騙しても何の不利益もありません。一方、コミュニティ内の人間が嘘をつけば、報復を受ける可能性があり、それは不利益につながります。このような理由から、私たちは自然と、「馴染みのフォーマットに沿った情報=信頼できる情報」を好む傾向が生まれたんです。

コミュニティ外の人を見たら泥棒と思えってことだね!

現代だと、馴染みのある言葉遣いをしてても超他人だったりするもんね

確かに! インターネットで馴染みのある言葉に会いやすくなってるもんね!
現代では「フォーマット」で情報を判断できない

そして、問題は、この傾向が現代社会において不利に働きすぎている、ことです。
例えば、科学的な文献にあまり触れたことがない人にとっては、科学論文のフォーマットは読みづらく感じるでしょう。
それこそ「数学」というフォーマットで書かれているものを、「数学やだ」と自然と無視してしまうように、それがたとえ有益であったとしても、「科学論文」のようなフォーマットで書かれていたら「やだ」と無視してしまう可能性があるということです。これは、あまりにもったいないことです。
他にも、これは結構あるあるなんですが、まともな科学者が自己啓発っぽいフォーマットで本を書くこともあるんです。理由はシンプルで、そのほうが売れるからですね。で、その場合、自己啓発系のフォーマットで書かれていたとしても、その内容が真摯な科学者が人生をかけて行った研究結果だったりするわけです。
が、私たちの中には、「自己啓発っぽい」フォーマットだけで拒絶反応を示してしまう人もいます。その情報自体は非常に有益なものかもしれないのに。
で、まあここまでなら「有益な情報を逃す」だけです。多少損をしても、破滅のリスクはありません。が、問題は「破滅」につながる考え方が「見知ったフォーマット」で出てきたときに、私たちはあまりに無力になってしまう、ということです。
わかりやすいのがTwitter(X)でしょう。Xでバズる情報は、実は内容の正確性とは無関係であるといわれています。つまり、間違っている情報でもバズってしまうのです。その時、私たちはTwitterというフォーマットで書かれていて、RTの数が多い場合、その情報を信じてしまうという事態になってしまうのです。
例えば、「会社は福利厚生と賃金で選べ」みたいな言説をよく見かけますが、休みの日の多さはともかく、賃金と仕事への満足度は言われているほど高くはありません。なぜなら、どれだけ高い賃金でも「慣れ」てしまうからです。しかし、Twitterでこの情報は多く見かけますし、実際、これを信じている友人も周りには多かったです。
で、それを信じて仕事を選んでしまったら? その先50年近く、「ヤな仕事」に従事しなければいけなくなってしまいます。あまりに影響がでかすぎるわけです。
フォーマットで情報を判断したくなるのは、人間として仕方のないことです。実際、私たちがこれまで生き延びてこられたのは、ある程度信頼できるフォーマットの情報を信じてきたからです。でも、それだけでは「破滅」してしまうリスクが現代には多くあるんです。

会社を賃金で選ぶと後悔するの!? 嘘!?

結構みんな言ってるから、正しいと思ってたよね…

こうなったら、私は会社を「どれだけ社食がおいしいか」で選ぶことにする!
破滅を防ぐためにはどうしたらいいのか?

というわけで、見知ったフォーマットによる不意打ち気味の破滅に対応し、見知らぬフォーマットによる有益な情報を手に入れるためには、どうしたらいいのか?
バイアスの対策は、「バイアスが存在する」と認識するのが第一歩と言われています。つまり、「人間はフォーマットで情報の正誤を判断してしまうかもしれない」と意識するだけで、知らず知らずのうちに罠にはまってしまうことを防げます。
それ以外には、「実地研修」が効果的だと考えられます。
私は、様々な本を読んできました。見知ったフォーマットでもあまり役に立たなかった本がある一方で、慣れ親しんでいないフォーマット、例えばビジネス書なども、読み解くことで得られた知識が役立つことがありました。
結論を言うと、行き詰まっている場合や辛い状況にある時こそ、自分の慣れ親しんでいるフォーマットから一度離れて、全く異なる種類の情報源に触れてみることをおすすめします。
例えば、普段は科学的な本ばかり読んでいる人なら、たまには小説を読んでみるのもいいかもしれません。逆に、フィクションばかり読んでいる人なら、ノンフィクションや科学の本に挑戦してみるのも良いかも。あるいは、普段はテレビを見ない人が、教養番組を見てみるのも面白いかもしれません。
そして、その情報に対して、自分の出来得る限りで裏を取ってみるのです。そうすれば、「見知らぬフォーマットの中にも有益な情報がある」という認識を得ることができます。
新しいフォーマットの情報が「正しい」、慣れ親しんだフォーマットが「間違っている」というわけではありません。別のフォーマットでも、「こういう考え方もあるのか」「こんな仮説もあるのか」という視点で情報を取り入れ、その情報の内容を試してみることが大事だと思います。
たとえうまくいかなくても、裏を取っていればそこまでひどいことにはなりません。重要なのは、最初のフィルターでシャットアウトしてしまわないことです。この方法を試すことで、新しい視点を持つことができます。その視点で、思わぬ解決策や可能性が見えてくるかもしれないんです。
普段とは違うジャンルの本を読んでみたり、新しい分野のポッドキャストを聴いてみたり。そこから得られる新しい視点が意外な発見につながるかもしれません。
私の考察が、皆様のお役に立てば幸いです。それでは、良い創作ライフを!

よ~し、じゃあ私は神託を試してみることにするよ!

どうしてそうなったの!?

馴染みないし、面白そうじゃん! 早速修行してくる!
参考文献
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド (著), 上杉周作、関美和 (翻訳)
私たちがいかに思い込みにとらわれているかを教えてくれる本。例えば、極度の貧困率が過去20年で大幅に減少しているのにもかかわらず、なぜか私たちは「世界はどんどん悪くなっている」と思い込んでしまう。人間の「思い込み」を10のパターンに分け、その対策を教えてくれる。
欲しい!はこうしてつくられる 脳科学者とマーケターが教える「買い物」の心理
マット・ジョンソン (著), プリンス・ギューマン (著), 花塚恵 (翻訳)
企業がいかに消費者を巧みに操っているかを、脳科学者とマーケターのタッグが教えてくれる本。なんでファストフード店のロゴが赤と黄色であるのか? これには実は企業戦略が隠れてるんだよ~と教えてくれる。本文の一番のアイデアはここからできた。
Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法
ロルフ・ドベリ (著)、 安原和見 (翻訳)
私たちが日常生活で陥りがちな思考の罠を見抜き、それを回避するための具体的な方法を示してくれる。なぜ私たちが間違った判断を下してしまうのかを解き明かし、その解決策を提案。計画の立て方、意識すべき心理的なバイアス、効果的な意思決定のためのアプローチなどが紹介されていて、バイアスの入門書としておススメ。


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