はじめに

こんにちは、雨夏ユカリです。
皆さんは、「ネガティブ」と「ポジティブ」どっちが良いですか?
現代社会において、ネガティブは悪者にされがちです。そこら辺を見渡せば「前向きに考えよう」だの「ポジティブになろう」だのといった主張が高々と掲げられていることでしょう。余計なお世話です。
この主張をどう思うかは個人によると思います。が、この主張に対して、どこか嫌な気持ちになった人は、少なくないんじゃないでしょうか。
今回のテーマはそんな「ポジティブ思考」についてです。
ベストセラー『限りある時間の使い方』で有名なオリバー・バークマン氏の『ネガティブ思考は最高のスキルである』という本をベースにして、「果たして本当にポジティブシンキングは良いものなのか?」について掘り下げていこうと思います。
結論から言うと、「ポジティブシンキングは、意外と害悪である」ということが、現代心理学で見えつつあるんですよね。

え!? 「私は幸せ」って100回唱えると幸せになれるんじゃないの!?

……。実際試してみてどうだったの?

ん~、唱えてる時よりおいしいもの食べてる時のほうが幸せだった!
極端なポジティブシンキングの世界

まずは、誰もがゴミだとわかる極端なポジティブシンキングの世界について考えましょう。
胡散臭い自己啓発セミナーなどでよく見られる光景を想像してみてください。
ステージには「やる気」や「成功」といった言葉が大きく書かれた横断幕が掲げられ、講師は「人生から”不可能”という言葉を削除すれば、必ず変われる!」といった主張を大声で叫び散らしています。
どう思いましたか?
こういった極端なポジティブシンキングに対しては、拒否感を持つ人も多いと思います。人によっては会場に発煙筒を投げ入れて、セミナー講師がどこまで「ポジティブ」でいられるかを見たくなる人もいるでしょう。火事の中でも「前向きになればうまくいく!」と唱えられたら本物ということです。
しかし、ここまで極端でなければ、多くの人が「ポジティブ思考は大切だ」と考えているのではないでしょうか?
実際、ポジティブシンキングとネガティブシンキングのどちらが良いかと問われれば、多くの人は迷わず「ポジティブシンキング」と答えるでしょう。
「もっと前向きになれたら」とか、「不安になっちゃう自分を直したい」とか、そんな悩みは現代社会ではよく聞きますし、誰もが一度は思ったことがあるでしょう。

自分の辞書から不可能という言葉を抹消すれば、必ず変われるんだよ!

そっか。じゃあ部屋の片付けも不可能じゃないってことね

うっ! それとこれとは、べつの、はなし……。
ポジティブシンキングの罠

しかし、実はポジティブシンキングには意外な罠が潜んでいます。
最近の科学的研究によると、ポジティブシンキングは人間のメンタルに悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。特に、不安や悩みを抱えやすい人にとっては、「ポジティブになりきれない自分」に苦しむことにつながってしまうがゆえに、その人を苦しめるのでは? と言われています。
ポジティブシンキングの罠は、以下の3つのポイントにまとめられます。
1.ポジティブに考えようとすると、逆につらくなる
2.成功した未来を思い描くと、やる気が消える
3.ポジティブだと死ぬ
これら3つのポイントについて、詳しく見ていきましょう。

ポジティブだと、死ぬ!!

流石に言い過ぎというか、極端というか……。どういう意味なんだろ?

ポジティブになりすぎて「空腹すら超越できる!」ってなっちゃったとか?

ヤバい存在すぎる……。
1. ポジティブに考えようとすると、逆に辛くなる

1つ目のポジティブシンキングの罠は、「辛くなる」ことです。
「ポジティブ思考をすると、逆につらくなる」
矛盾してない? と思う人も多いかもしれません。が、心理学的には十分に考えられる現象だということが、いくつかの実験で示唆されています。
白熊現象
ポジティブ思考をすると逆につらくなる理由の一つに、「白熊現象」があります。これは、ダニエル・ウェグナー教授が提唱した理論で、以下のような実験に基づいています。
「これから1分間、絶対に白熊のことを考えないでください。」
…さて、どうでしたか?ほとんどの人は、白熊のことを考えてしまったのではないでしょうか。
これは、人間が特定の何かについて考えないようにすればするほど、逆にそれについて考えてしまうという現象を示しています。つまり、何かを抑圧しようとすればするほど、その思考が止まらなくなってしまうのです。
例えば、デートの時に「緊張しないようにしないと……」と考えると余計に緊張してしまったりとか、好きになっちゃいけない人をより好きになってしまったりとか。結構よくある現象なので、覚えがある人もいるのではないでしょうか。
この現象は、ポジティブシンキングにも当てはまります。例えば、「自分はダメな奴だ」という思考を捨てようとすると、逆に「ダメな自分」についての思考が強まってしまうのです。
同様に、失敗や辛い経験を「考えないようにしよう」と抑圧すればするほど、それについての思考が強まってしまいます。例えば、嫌いな人と無理に付き合おうとすると、よりその人のことが嫌いになってしまうような経験はありませんか?これも同じ原理です。
ポジティブになろうとすると、ポジティブになれない?
さらに、「ポジティブ思考をすると逆につらくなる」理由の2つめとして、「無理にポジティブになろうとするほど、逆にポジティブな気持ちが消える傾向」があります。これについては、面白い実験結果があります。
実験では、ゲームをする際に「楽しむことを意識してください」と指示されたグループと、特に指示を受けなかったグループを比較すると、「楽しむことを意識してください」と指示を受けたグループの方が主観的な楽しさが低かったという結果が出ています。
これは、「楽しまなければならない」というプレッシャーが、かえって楽しむことの妨げになってしまうためだと考えられています。物事に集中できなくなってしまうのです。
日常生活でも同様のことが起こり得ます。例えば、「職場をハッピーにする」と張り切る上司の下で働く場合、些細な失敗に対してまでも「大丈夫、大丈夫!気持ちの問題よ!」と言われると、かえってストレスを感じることは容易に想像できるでしょう。そんな上司は考えただけでタバスコを振りかけたくなります。
この見るからにヤバい上司と同じことを、私たちは自分で自分に行っていることがあります。自分のミスを直視せずに、無理にポジティブに考えようとすること、していませんか?
「あれくらいのミス、大丈夫大丈夫。ポジティブに行こう」とか、そんな風に考えたことのある人はいるのではないでしょうか?
これも、自分に「ポジティブでなければならない」とプレッシャーをかけるせいで、かえって嫌な気分を増幅させることにつながってしまうのです。
結論。ポジティブになろうとすればするほど、それがプレッシャーとなり、逆に楽しめなくなってしまうのです。
それと同じように、「緊張しないようにしよう」とか「絶対うまくいかせよう」とか、そんな風に考えることで、それがプレッシャーとなり、自分の力を発揮できなくなることは多いです。
デートの例を挙げると、「絶対に上手くいかせなければ」と考えすぎると、かえって緊張して良いデートができなくなってしまうのと同じですね。むしろ、リラックスした状態で「うまくいったらラッキー」くらいの気持ちでいる方が、デートそのものを楽しめるでしょう。
結論として、無理にポジティブに考えようとすることは、逆効果になる可能性が高いのです。自分への「ポジティブプレッシャー」が生まれ、日常生活や楽しいはずの出来事を楽しめなくなってしまう危険があるということです。

結局さ、何も考えずにおいしいご飯を食べてる時が幸せってことだよね

……。

ふふ、いいこと言ったでしょ! さすが私!

今の一言で台無しだよ……
2. 成功した未来を思い描くと、やる気が消える

2つ目のポジティブシンキングの罠は、「やる気が消える」ことです。
これも意外に思えるかもしれません。多くの自己啓発本たちは、「成功した自分をイメージするのです!」「そうしたらモチベーション、アップだぜ! 最高!」いう言葉を高々と掲げています。
例えば、イラストレーターを目指している人なら、「プロのイラストレーターとして成功している自分」を想像することを勧められるでしょう。
しかし、実はこれも罠なのです。こうやって「ポジティブな未来」を思い描くと、なぜか、「やる気」が減少するという結果を招くんですね。
脳は妄想と現実の区別がつかない
なぜ、ポジティブな未来を思い描くとやる気が消えてしまうのか?
その理由は、人間の脳の性質にあります。
人間の脳には、妄想と現実の区別がつきにくいという特徴があります。証拠になる面白い実験結果もあります。
例えば、「緊張するような状況」を脳内で繰り返し想像した人たちは、その状況に遭遇した時のストレス反応が軽減されることがわかっています。つまり、イメージトレーニングは効果を発揮するのです。
この原理は、ポジティブな想像でも当てはまります。成功した未来を思い描くと、脳はそれを現実のように捉えてしまいます。その結果、脳は「目標達成した」と勘違いしてしまい、それ以上の努力を不要と判断、モチベーションを下げるのです。(このシステムがないと、無駄な労力を使いまくることになるので、ありがたいシステムではあります。)
これは皆さんも経験があるのではないでしょうか?
例えば、好きな相手とデートする妄想だけで満足してしまい、実際にデートに誘う行動を起こさなくなる、みたいなことはありがちだと思います。
効果的な「未来の思い描き方」はあるのか?
ただし、未来を思い描くことも、やり方次第では非常にうまく使えます。
どう未来をイメージするかというと、「成功した未来ではなく、そこに至るまでの苦しい努力を想像する」ことです。
先ほどの研究で示した通り、妄想することで、現実になった時のストレスを軽減する効果が見込めます。そのため「苦しい努力をしている自分」をイメージすることで(なお、なるべく具体的にイメージしたほうが良いそうです)、その努力に慣れ、実際の行動につながりやすくなるのです。
というわけで、結論としては、ポジティブな未来、成功した未来を思い描くことは控えめにしたほうが無難だということです。その代わりに、努力してしんどい過程をイメージするというポジティブとはいいがたい行動をとったほうがよさそうです。

超有名インフルエンサーになって豪華な食事をする妄想はダメってこと……?

うーん、たまにならいいんじゃない……?

代わりに炎上して謝罪動画とるところとか妄想するか……

まずはフォロワーを増やすための工夫からでは……?
3. ポジティブだと死ぬ

3つ目のポジティブ思考のデメリットは、「ポジティブだと死ぬ」ことです。
急に何言いだしてんだこいつ、と思うかもしれませんが、実は「ポジティブであること」「幸福であること」にはデメリットが存在しているんですね。
人類は基本ネガティブである
意外かもしれませんが、人類は基本ネガティブです。「ネガティビティバイアス」というものが存在しており、基本的に、「良いニュースより悪いニュースに注目しがち」であるといわれています。
例えば、我々日陰者から見て陽キャでパリピ―な人たちにはネガティブなんて存在しないのでは? と思いがちです。しかし、彼らに話を聞いてみると意外とネガティブになることも多い、という回答が返ってきます。まああくまで私の個人的な観測範囲ですが。
漫画『正反対の君と僕』で、山田という根が明るい少年が登場します。そんな彼ですら「ネガティブになることがないと思っていた」と言われたときに「俺を何だと思ってるの?」と返してます。つまり、思ったよりネガティブになっているわけです。
幸福にもデメリットがある
そして、「幸福であること」はみんなが求めてやまないことですが、これにもデメリットがあります。幸福は、現実の認識を歪めてしまうのです。
どういうことかというと、幸福である人にも「いやなこと」は起こるわけです。が、実は幸福な人はこの「いやなこと」を認識しなくなる傾向があるのです。
それの何が悪いの? と思うかもしれませんが、「いやなこと」を認識しないということは、「現実を正しく認識していない」ことでもあります。
例えば、好きな人と会話をしていたとしましょう。その時に、実は相手が全く楽しんでいなくて、退屈していたとします。
その時に、幸福感の高い人は「相手が退屈している事実」を見逃す傾向が高くなります。なぜなら、「退屈している」と知ったら幸福感が下がるからです。その結果、自分では「うまく会話できた」と思っているのに、次のデートに誘っても返事が来ない、という結果になるわけです。
実際、人間関係において人見知りで引っ込み思案な人ほど、相手をよく観察していて、相手の感情に敏感であることを示す研究があります。いわゆる陽キャの人たちは対人不安がないのでガンガンいけますが、その分相手の感情に鈍感であり、うまくいかないケースもあるんですね。
ネガティブシンキングの生存における利点
つまり、「幸福になること」「ポジティブになること」にはデメリットがあるわけです。
そして、実は現代まで人類が生き残ることに「ネガティブ」が欠かせなかったのです。なぜなら、「ポジティブ」で「幸福すぎる」人は、「死」を避けることができないからです。
狩猟採集をしていた時代の人類について考えてみましょう。彼らが歩いていたら、夜、真っ暗な森の中でガサガサと音がした時を想像してみてください。
「まあとくに問題はないっしょ」とポジティブに考える人と、「猛獣がいる可能性があるな、逃げたほうがいい」と考える人、どっちが生き延びやすいでしょうか?
危険を避け、ネガティブに考えていたほうが、生存しやすくなるのは言うまでもないでしょう。問題ないっしょと考えていたら、最強生命体「熊」に襲われて死にかねません。
そして、この傾向は現代社会でも見ることができます。もちろん、最強生命体「熊」に襲われて死ぬ確率は限りなく低いですが、現代ではクマの代わりに「生活習慣病」が猛威を振るっているのです。
「将来、筋力が衰えたり認知症になったりするのは嫌だな」と考えるネガティブな人と、「好きなものを食べて楽しく生きればいい」と考えるポジティブな人では、前者の方が健康的な生活習慣を身につけやすいでしょう。
その結果、どちらが長生きしやすくなるか……。運にもよりますが、健康に気を使っている人のほうに軍配が上がることでしょう。
実際、ネガティブな人のほうが現実を見るのがうまいです。例えば、うつ病の人は自分の能力や未来に対して「現実的な予測」を立てやすいという研究結果もあります。
つまり、ネガティブに考えることで、危険に気づき、それを回避する行動をとりやすくなるのです。逆にポジティブになってしまうことで、のほほーんとしながらお星さまの仲間入りをしてしまう可能性が高くなってしまうんですね。

のほほーんとしながらお星さまの仲間入り……。

お姉ちゃん、嫌ならちゃんと野菜食べて運動しようね?

うわーん、ネガティブな妹がいじめる~~~!
まとめ

現代社会では、ポジティブ思考が過度に美化されている傾向があります。しかし、そのせいで逆に苦しんでいる人も多いです。
実際、性格の傾向(ポジティブかネガティブか)は約50%が遺伝的に決定されるとされており(わかりやすく50%遺伝と言っていますが、実際はもうちょい複雑です)、完全に変えることは難しい場合もあります。そんな中で、無理にポジティブになろうとして苦しむのは、あまりに勿体ないです。
私自身も非常にネガティブな性格ですが、そのネガティブさゆえに健康的な生活習慣を心がけたり、将来への不安から貯金をしたりと、自分のネガティブさを役立てています。
ポジティブ思考には確かにメリットもあります。例えば、ポジティブな人の方が人間関係を築きやすいとか。褒め言葉をくれる人と、常に否定しかしない人では、前者の方が付き合いやすいですよね。
しかし、それと同時に今回お話ししたようなデメリットもあるのです。大切なのは、自分の性格や思考パターンを無理に変えようとするのではなく、それを受け入れた上で、どう行動するかを考えることだと思います。
というわけで、私の経験、考察が皆様のお役に立てば幸いです。それでは、良い創作ライフを!

よーしわかった! 毎日「今日は最悪な日になりそう!」って言いながら起きる!

待って待って! それは極端だから!

冗談冗談。でもコンビニスイーツはちょっと控えるよ

お姉ちゃん、偉い!
さらに詳しく学びたい人のための本
今回取り上げた内容についてより詳しく勉強したい! という人には、以下の本がおすすめです。今回の参考文献として紹介しておきます。


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